絶景アルプス生中継
le jeudi 20 mai 2010
朝早く起きてテラスで朝日を拝む。私たちがリュベロンを離れる今日になって、ようやくミストラルもやんだみたいだ。風のない穏やかな朝。8時にお迎えの車が来るので、お見送りのため、2人のお部屋をノック。楽しいみんなとの10日間の旅はここまで。NちゃんとSaちゃんは、これから車に乗ってマノスク(Manosque)へ。そこから電車でニース(Nice)まで行く。Nちゃんはニースで1泊した後、日本に帰国。Saちゃんはニースに1週間滞在した後、パリに戻ってきて計3ヶ月間、ヨーロッパ内を旅行。私がフランスにいる間はパリにいるので、またおいしいものでも一緒に食べに行きたいね。
2人を見送った後、あまりにもお天気が良いので、私のテラスで一人朝食。今までの強風が嘘のように抜けるような青い空に、聞こえてくるのは小鳥の声だけ。朝食を食べながら、なんとなく、このまま南仏を終わるのは嫌だな…と思った。今年の南仏は風に吹かれ続けて、ネットが使えずイライラして、風邪も引き、アレルギーに苦しみ、仲間と過ごした時間は楽しかったけど100%の南仏じゃなかった。それにこういう完璧に穏やかな時間が欲しくて南仏に毎年来てるんだから、帰国までにもう1度1泊でも良いから来たい。昨日Alex.が電話をかけてきてくれたとき、念を押すように言ってくれた。「6月の末、再度来るならぜひ家に泊まりにおいで…」って。う~ん、好意に甘えようかな…と、昨日から漠然と考えていたけど、今朝、決心がついた。やっぱりもう一度来よう。
11hに今夜から2泊お世話になるお宅の C&M が片道3時間かけて車で迎えに来てくれることになっていた。面識のないMag.も快く引き受けてくれて、2人で宿のカフェでコーヒーを飲みながら待つ。本当は私たちもマノスクまで今朝の2人と一緒に行き、そこからブリアンソン(Briançon)行きの列車に乗ろうと思っていた。そしたら「車で宿まで行くから列車の予約をしないように」との命が。片道3時間だよ!なんとも心苦しいことだけど、その親切を無為に断るわけにもいかず…。
予定通りに彼らが到着。駐車場まで荷物を運んで、さあ出発なのだ。アルプスの少女ハイジに会いに!再会の会話でしばらく盛り上がっているうちに、風景がだんだんと山深くなっていた。
3時間の道のりは長いし、C&M のおなかも減ってきたので、セール・ポンソン(Serre Ponçon)の近くで昼食。この巨大な人口湖 Lac de Serre Ponçon は、ラ・リビエール(la Ribière)とリル・ドゥ・ルセ(l'Ile de Rousset) と言う2つの集落が犠牲になって出来上がった。湖に潜ると昔の集落がそのまま残っているらしい。雄大なお山に囲まれた美しい湖なのに、なんとなく悲しいお話。でもここの生活を支えていくためには必要だったんだろう。
その後、自然が作り出したありえない造形 レ・ドゥモワゼル・クワフェ (les Demoiselles Coiffées) を見に行き、家路についた。ここには写真のような奇妙な造形物がいくつか並んでいる。長い年月をかけて、風雨が切り出したこれら自然の彫刻作品は、まるでガウディの作品のよう。微妙なバランスを保ってかろうじて載っているように見える上の石。バランスが崩れたときには、いつか落ちてくるんだろうか…。考えると怖い。
最寄の街、ブリアンソンを通過して、小さな集落に到着。おうちのテラスから見えるのは雪の残るアルプスの山々。私に与えられた2階のお部屋からもテラスと同じ Prorel山が見える。100ユーロ級の贅沢なとってもラブリーなお部屋です。
お茶を飲んだり、お菓子をつまんだり、夕食までの時間はテラスでのんびり。まだTシャツとはいかないまでも太陽が出ているともう寒くはない。
今夜のご飯はこの地方ではよく食べられるラクレット。チーズたんまり、お芋もおいしいし、食べまくって、ど~んと胃が重い。食後のチーズもこの地方の有名なボーフォールなど3種類ほど。デザートはおいしいイチゴたち。今、こちらではまだ旬ですから。
明日は、フランスのもっとも美しい村の1つにも選ばれている集落へGO。
再会の日の夜は、食後も楽しいおしゃべりが続いて、あっという間に過ぎていく。Mag.もすっかり2人と仲良くなって、とくに私たちミーハー2人はTV界で働いていたMの話を楽しく聞いた。
ただ、たくさんのハエと格闘しながら…。田舎暮らしは、本当、ハエとの戦いです。
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le vendredi 21 mai 2010
朝は最近、目覚ましがなる前に目が覚めるようになった。今日も気持ちの良い快晴。ただ山なので、朝夕はやっぱり少しまだ冷える。
朝ごはんをみんなで食べて、保冷袋にお昼のピクニックの用意をつめて元気よく出発。今日の最初の訪問地は、フランスのもっとも美しい村の1つにも選ばれている集落サン・ヴェラン(Saint-Véran)。ここは2042mの高さに位置し、ヨーロッパの中でもっとも高い所にある集落でもある。
全体的には地味な色合いで、陽気な感じはない。1年の半分は(特に昔は)雪に閉ざされる所だからか、なんとなく閉鎖的な雰囲気もある。C&Mも言ってたけれど、山の人たちと言うのは、日本の古い農村のように頑ななところがあるらしく、外から来た人に笑顔で挨拶するような感じではないらしい。
とは言っても、気分はハイジ。羊さんの群れの中には、生まれたばかりの子羊さんもいっぱい。こんな可愛い子達を食べてると思うと少々心が痛む…。
この地方の伝統的な家屋が見学できる Musée du Soum は、昔の生活様式を教えてくれる貴重な存在。日本で言う1階は石造りの家畜のスペース。これは動物の体温を利用して、家を温めるという意味もあったらしい。そして2階以上が住まい。2重窓もなかった時代、この雪深い村の冬はさぞ、大変だった事だろうと思う。
村には2ヵ所ほどパン焼き場があり、使われていた時代の写真とともに公開されている。。雪に閉ざされている期間、人も物もまったく動けなかった時代、パンも住民たちの手で保存用にた くさん焼き、家の保管庫で保存をしていたらしい。家の中の適度な湿気で、表面の硬いパンはなんとか食べられる状態を保っていたらしいけど、どうしてもカビそう。6ヶ月たったパンって、どんな感じなんだろう。まあ、おいしくないことだけは確かだろう。
洗濯場にも昔の写真があったけど、これもまた大変だっただろうな。冬場の水の冷たさはどこでも大変だろうけど、ここは特に寒いし大変だったに違いない。ゴム手袋もない時代、刺すように冷たい水で大きなシーツなんかを洗ったかと思うと、もう今の洗濯機に感謝、感謝。
お昼、太陽が隠れてしまって、少し肌寒くなったので、ピクニックをあきらめて、村の中にあるホテル Le Grand Tetras でランチ。リモージュから来ていた老人会の団体旅行客50人ほどと一緒になって、にぎやかなのなんのって、C&Mも苦笑。
私は夕食に備えてサラダだけにしたんだけど、隣のMag.が食べたステーキのブルーチーズ・ソースが美味しすぎて、彼女のフリット(フライドポテト)をソースと共に半分以上もらっちゃいました。これじゃあサラダを頼んだ意味も半減…。
食後、まだ2~3mの雪が残る イゾアール峠(col d'Izoard)へ。標高2361mの山だけど、まだ道路が雪で閉ざされていててっぺんまではいけなかった。スキー場以外でこんなに高く積もった雪を見たことがないので、感動しまくりの私。誰も触れることなく積み重なっていった雪は、なんとなくブルーの色をしていて、時折顔をだす太陽の光をキラキラと反射していた。
下界に降りて最寄の街、ブリアンソンの旧市街を歩く。写真は一番お店などが集まっている通り。Cはこのあたりの店も最近は観光客目当ての店が増えて、昔のよさがなくなってきたわ…と嘆いていた。どこも観光で食べている地域は同じなんだね。観光資源も生き残りをかけて、ある意味仕方がないんだろうけど、どこに行っても同じような店って、本当つまらない現象だ。
振り返るとまたそこには山が…。このあたりはどこまで行ってもこの山の景色からは逃れられない。巨大アルプスの山は雄大だけど、雄大すぎて、自然の怖さを感じる。だから私は心が休まらない…。それにやっぱり少し高いところに行くと、胸が苦しくなるので、ここにいて心も体も心底リラックスすることはないのかも…。
家に戻り、夕食までのひと時仕事をしようとPCを立ち上げると、パートナーがオンライン。スカイプで絶景アルプスを生中継した。C&Mも家の中も全部紹介。ただ彼は歯磨き中で、次々知らない人を紹介されて、ビックリしてたけど(笑)
夜はもちろんCのお料理を頂き、ゆっくりとお喋りをして、お休みなさい…と言いたいところだけど、集っているハエをバスルームと寝室から追い出すのに一苦労。田舎ではハエを大好きになるか、こうして格闘し続けるか、見えないふりをするか…、この3つの選択肢しかないみたい。
私の部屋、パッチワークのベッドカバーをめくるとこんな風に。夜バージョンも可愛いでしょ?
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le samedi 22 mai 2010
今朝も快晴のスタート。午後からは少しかげりが出てくるらしいので、朝食を食べて早速お散歩へ。
まずはヴァレ・ドゥ・ラ・クラレ(Vallée de la Clarée)へ。静かな流れかと思いきや、少し行くと滝。轟音をたてる水流からマイナスイオンをいっぱい浴びる。
その後、途中ネヴァシュ(Névache)と言う街に立ち寄って観光局で資料をもらってから、イタリアとの国境にあるエシェル峠(col de l'Echelle、1766m)、残雪で最後まで行けなかったけどグラノン峠(col du Granon、2413m)etc. いくつかの景勝地へ案内してもらった。その間はずっと晴れたままで、私の小さな雪だるまさんもあっという間にとけてしまってちょっと残念!
今日は、長い冬から目覚めておなかを空かせたマルモットをたくさん見かけた。動きが早すぎて写真は撮れなかったけど、可愛い顔で、走り回っていた。春の到来をずっと楽しみに待ってたんだろうね!
おうちに戻って、ちょっと遅めのランチ。またCがあっという間に用意してくれて、やっぱりちゃんと前菜、メイン、フロマージュ+フルーツのデザート。写真はこの地方でよく食べられているトゥールトン(tourton) という名の揚げ物。中身はお肉だったり、フロマージュだったり、色々。あ~、とにかく南仏に引き続き、よく食べた3日間でした。パリに戻ったら今年は歩くよ~!
食後、テラスにくつろぎながらPCを立ち上げると、今日は母がオンライン。母にもここの家族や山の景色を生中継することが出来て良かった。
Cともここでようやく2人になって話すことができた。今回はMag.を連れて行ったので、なかなか2人になる機会がなかったけれど、大病を患っていた彼女も治療がようやく済んで、最近、先生から完治の宣言をしてもらったらしい。これで一安心。苦しい治療をあきらめず続けて本当によかったね…。
さあ、出発の時。夕方の列車でパリに戻る。最初、フランスで初めての夜行列車に乗る予定だったんだけど、最後の最後になってMag.がやっぱりTGVで帰ろう…と弱気発言。まあどこでも寝られる私と違って、乗り物では一切眠れない彼女だから仕方ない。車で国境を越え、イタリアの小さな駅、なぜここにTGVがとまるのか良く分からないけど、Oulx駅から5時間ほどかけてパリに戻ることにした。少ししんみりと駅のカフェでお茶を飲みながら遅れている列車を待つ。コーヒーや紅茶、コーラなど4人がそれぞれ何かを頼んでも、合計5ユーロほど。物価安っ、ここ。
今度ここに来れるのは2年後だろうか。山の生活はハイジほど得意ではないけど、やっぱりC&Mにはまた会いに来たい。
あ、ちなみに低燃費ハイジの映像を口頭で訳をつけながら見てもらうと、みんなに大うけ。あのしつこいハイジの声をアルプスの山に轟かせておきました!
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