パリで缶詰① ゆるゆる編

南仏での夢のような日々は終わってしまった。パリはもはや私にとっては大阪ではないってだけで、仕事が追いかけてくる現実的な場所だ。

帰宅早々、頭の痛い仕事が待っていた。私にとって大切な連載の締め切りが、今月はいつもより早い。もともとフランスに旅立つ前に、この締め切り分までは、やって行こうと思っていた。パリの書斎には必要な資料が何もないので仕事がしづらいし、何よりせっかく休暇でフランスにいるのだから、出来るだけ仕事はしたくなかった。でも出発前、どれだけ仕事をしても、そこまでは手が回らなかったのだから仕方がない。何もないここで書けるテーマを探そう…。

って事で、しばらくパリのおうちで缶詰、と言っても今回はふたの開いた缶くらい。活動は抑え気味に、でもふらふらと家は出て行きます。

だって、2日（土）は芝居のチケットをすでに予約していたのだ。この L'ELOIGNEMENT はこの週末3回だけの特別公演。数日前、オンラインでチケットを予約したとき、この土曜日の15時の回だけ1番前の座席が残っていたので、思わずそれをゲットしてしまった。先日、芝居を見たばかりのエドゥアール7世劇場で、Pierre Arditi （ピエール・アルディティ）が今度は Carole Bouquet （キャロル・ブーケ）と共演。それにしても役者ってのはすごいね。彼は FAISONS UN RÊVE 続行中にもかかわらず、この週末だけはこの芝居の役になりきらなくてはならない。どちらもしゃべりまくる主役なのに、あれだけの台詞を暗記するってのはどんな方法を使うんだろう…。

当日、劇場に到着すると、表には大きなアンテナを載せたテレビの中継車が来ていて、劇場のホワイエには張り紙。どうやら20時の回がFRANCE2で生中継されるとの事。映りたくない人はスタッフに申し出てください！なんて事も書いてあった。劇場で芝居を観てからおうちへ帰り、夜はTVで復習。同じ日に同じ芝居を2度も観るってなんか不思議な感じだった。生中継ではカーテンコールの後、François Berléand（フランソワ・ベルレアン）がゲストで舞台に上がり、役者の皆さんとおしゃべり。夜の回もそんなおまけがあって楽しそうだったけど、なんと言っても最前列がとれる機会もそうはないと思うのでこの日の私は大満足。

ただ、最初はコメディかと思いきや、タイトルの通り、自分のことばかりのこのダンナが奥さんに急に別れを告げられる熟年離別の結末に、少ししんみりした気持ちになってしまったのでした…。

その夜はオペラ・ガルニエからダンスを観て戻ってきた南仏旅友達と近くのカフェで夕食。翌日3日（日）の夜は Nantes （ナント）に遠足に行ったJJ+Lu以外のみんな＋Mag.で13区の中華街へ。みんなの大好きなフォーを目指して行ったのは Pho Banh Cuon 14 （129, av. de Choisy 13e）。とても人気のある店らしく待ちは必至。パクチー盛り盛りで頂きました。もちろんサイズは”大”です。ちょっと弱り気味だったM子もこのフォーのおかげで完全復活！

4日（月）は南仏旅友達のパリ最終日（LuとSちゃんは3ヶ月滞在だから残ります）。この日も私は夜だけ合流。カフェでお茶した後、先日C姉に連れて行ってもらったばかりの Le Montparnasse 1900 (59, bd. du Montparnasse 6e)へ。アール・ヌーヴォーの極上の装飾、みんな喜んでくれたかな。でもお料理はがっつり系。この日もきれいに残さず完食の上、パンかごまで空っぽにしてしまって、またまた胃拡張になった。このレストランは食べ過ぎに注意しないと！もう遅いけど…。

5日（火）朝は南仏旅友達を居残り組3人でお見送り。朝食でも一緒に…と思ったけど、やっぱり出発の朝はみんな大変そうなので、おとなしくお見送りだけ。また大阪で会えるしね！東京のM子も大阪に遊びに来てくれるって言ってたし。みんなで集まるのはきっとS子ちゃんの帰国する7月以降になるけど、楽しみです！

居残り組みはその後、なじみのカフェでおしゃべりしてから解散。二人とも今日はグ～タラするんだって。そうそう、LuもS子ちゃんも南仏のあとは私の住む館に引越しをしてきたので、超ご近所さん。さながら寮生活ってところ！

夜は久しぶりにパリに戻ってきたSから召集がかかったので、バスチーユのいつものバーへ（赤い光がキレイ）。靴職人NもSの親友Vもやってきた。この夜はヨーロッパチャンピオンズリーグ準決勝。Sはいつもサッカーは友達と会う口実って言うけど、けっこう好きなんじゃん！み～んな試合の画面に夢中。それにしてもやっぱりこういう場所に女性は少ない。サッカー観戦ってのはホントここでは男社会のアイテムである。

6日（水）の今日はまたまた夜だけRDV。4月19日に研修旅行組みを一緒に見送ってから、一度も会えてなかったT子さんを交えてLu+Sちゃんと4人で夕食。T子さんは1ヶ月滞在を終えて10日に 帰国するんだけど、明日から私はノルマンディーに行くので、今夜会うことになった。まずはみんなで彼女の借りているおうちを訪問。私が留学時代に住んでいたコメルス界隈にある小さな建物の小さなステュディオはアンティークが趣味よく飾られていて、とっても可愛らしい。いつか私もコメルスに戻ってきたいな…。

南仏の写真をデジカメで見ているT子さんとSちゃん、なんだかフェルメールの絵画のような雰囲気をかもし出していた。

せっかくコメルスに来たので、久しぶりに chez Papa（101, rue de la Croix-Nivert 15e) に行く事にした。住んでいたころ、このガッツリ系の安さにひかれて良く足を運んだ。特におしゃれなお店なんかに興味のない男子とかお金のない学生に人気があって、週末の夜中の賑わいといったらそれは当時の私には一種の衝撃だった。でも今はこのレストラン・チェーンのオーナーも変わったらしく、 そんな雰囲気も失われてしまったのかな…。少なくとももうこの絵のパパがお店に挨拶しに来ることはないのだね…。時代の変化をこういうところでも実感する今日この頃。

お店を出た後、散歩をしながらまたカフェに落ち着く。Ｔ子さんも滞在中はニースへ行ったり、お友達を訪ねてドイツへ行ったり、充実した日々を過ごしていたそう。本当にいい1ヶ月だった…と言うＴ子さんの満足感がひしひしと伝わってきて、私達も幸せな気分に！Ｔ子さんとお別れした後も、そのノリでモンパルナス駅までお散歩。Ｔ子さん、また大阪で会いましょう。bon retour !!!

と、言うことで明日からは3泊4日でノルマンディーに行ってきます。

ゆるゆる缶詰生活の成果はやっぱりほとんどなく、資料を集めて、テーマを決めて、構想をまとめてタイム・アップ。続きはノルマンディーから戻ってから！一応、ぶっとい本を1冊かばんに入れたけど、絶対に読む時間なさそ～。