Le Havre
夕べ遅くパリに戻り、今日はノルマンディーのル・アーヴル(Le Havre)へ、仕事を兼ねて知り合いの若いフランス人夫婦を訪ねる。南から北へかなりの移動距離。ノルマンディーと言えば良く雨が降る場所として知られているけど、幸い私はいつもお天気に恵まれている。ここで雨にあったことがない…と、ノルマンディーの友人達に話すと、みんな驚いてたっけ。もちろん今日も快晴!南仏にはかなわないにしても気温も上がり、最後の1週間、なんか幸先が良い!
ル・アーヴルは、”印象派”という言葉が生まれるきっかけになったクロード・モネの作品「印象・日の出 /Impression, soleil levant」が描かれた場所としても知られているけど、建築マニアの私にとっても以前から興味深い場所だった。戦時中、壊滅的な被害を受けたこの街は、コンクリート建築で知られた建築家オーギュスト・ペレがその再建の指揮に当たり、その地域一体が2005年、ユネスコの世界遺産に選ばれたのだ。それ以降、建築家の名も街の名も知名度はかなりアップしたように思う。
オーギュスト・ペレは私のブログの中にも時々名前の出てくるフランス近代建築には欠かせない重要な建築家。その彼が手がけた大仕事をずっと前から見に行かなくては…と思っていたので、今回の仕事がそれを後押ししてくれたのはラッキーだった。ただ、今回は私のスケジュールの問題もあり日帰り、仕事優先です。
10h51にパリのサン・ラザール駅を出発し、ちょうど2時間でル・アーブルに到着する。TGVではないので、距離のわりには時間がかかる。1年半ぶりのTとSが駅まで迎えに来てくれた。駅前のレストランでランチを取りながら、ひさしぶりのおしゃべり。その後、二人のおうちでお仕事。
二人のおうちはル・アーヴルの中心地から車で20~30分ほど走ったのどかな田園の中にある。30代半ばのTは薬局を経営、最近まで子育てに専念していた30くらいのSは友人と二人で子供靴のお店を経営している。二人して経営者。日本人(そして庶民)の私からすれば夢のような大きな家に、まだ小さい子供達二人と住んでいる。フランスらしい昔ながらの家ではなく、木をふんだんに使ったモダンなデザインの家。とっても素敵だけど、夏場はけっこう暑いらしい(住んでみてわかったようだ)。
今日は二人ともお仕事を休んで付き合ってくれたのだけど、小さな二人の子供を預かってくれる人が見つからず、子供連れ観光。言う事は聞かないわ、泣き叫ぶわ、走り回るわ、こけるわ、買ったばっかりのアイスを地面に落とすわ(笑)、それはもう大変。世の中のお母さん達は本当にあっぱれだと思う!大人だけの時間を大切にするフランス人なので、TとSは「子連れ観光になってごめんね…」と、何度も謝っていたけど、なんのなんの、普段子供と接する機会のない私には、どちらかと言うと滅多にない面白い経験です。
ところで、上のお兄ちゃんAは、(上の写真の)像の足下にある戦没者の名を刻んだプレート(だと思う)の上を走り回った時に、えらいこっぴどく叱られていた…。フランスの子育てを見ていて「すごいな~」といつも思うのは、子供が悪いことをした時には、きちんと理論的な説明で諭すこと。相手が子供だからと言って、そういう時には決して子ども扱いをせず、大人の理論を理解させようとする所…だろうか。(もちろん、その様な場合ばかりでもないけど…)
今まで色々な人の観光に付き合って来て思う事は、観光客が見たいものと、そこに住む人が見せたいものは必ずしも同じではない、という事。今回私は(またここに来ると決めているけど…)とりあえず今日の限られた時間は、ペレの再建地域だけをじっくり見たかった。でも彼ら(特にハンドルを握るTは)、まずル・アーヴルの街をくまなく見せたかったのだと思う。まずはヨーロッパで5番目と言う規模を誇る海岸。そして同じくヨーロッパ屈指の港。そして北上し、商店が続く街の目抜き通りを庶民的な界隈からセレブな界隈へ。海が見渡せる超高級住宅地が続く高台、そして「世界の果て」と呼ばれているその果てまで…。
対岸はオンフルール。1996年にオンフルールを旅したとき、帰りは完成したばかりのノルマンディー橋をバスで渡り、ここル・アーヴルから列車に乗った思い出がある。この橋、えらく急な坂道を上っていく感じで、バスの中からでも充分に怖かった…。オンフルールにはぜひまた行きたいけど、できればこの橋はもう通りたくない。
って事で、ペレの建築めぐりは次回へ持ち越しとなりました~。写真が少し必要だったので、ちょっとそれは残念でもあるんだけど、二人にも久しぶりに会えたし、二人のおかげで一気に観光コースを巡ることが出来たので、それはそれで良かったのです。市庁舎広場では思いがけずオスカー・ニーマイヤーの作品「le Volcan (1982)」 にも出合えたしね。ちなみにこれ、市民ホールなどを擁する総合施設みたいなんだけど、現地の人は le Volcan (火山)の名もむなしく、”ヨーグルトの容器”って呼んでいるらしい。
今度、ル・アーヴルに来れるときは、しっかり予習して、何日かとって来ないと、見るべきものはたくさんありそうです。
T&S、どうもありがとう。また近いうちに!
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