初めてのバスク地方
フランスとの付き合いももうすぐ20年になろうとしている。地方の旅はお気に入りの南仏を含め、かなりしてきた方だと思うけれど、それでもフランスは広い!まだまだ行ってない場所も多いのだ。旅行者に戻った今、限られた時間の中で絶対にはずせないパリと南仏に行くとなると、新しい発見の旅に出たいのは山々だけれど、時間と予算が足りないのも事実。今回は研修旅行のオプション・ツアーに最近話題のバスク地方を選んだ所、4名の人が参加表明してくれた。予算オーバーだけど、旅の仲間が出来た以上、行くしかない。今まで後回しになっていたこのスペインにほど近いバスクへ、2泊3日の旅スタート。
なぜバスクを選んだかと言うと、昨秋知り合ったバスクに住むフランス人のご夫婦H&Nが「おうちにいつでも泊まりに来なさい」と言ってくれていた影響もある。今回は一人でないので泊まりには行けないけれど、会ってまたゆっくりお話でも出来れば嬉しいな…と思いメールを書いた。すると「私たちが車で案内するから!」と心強いお返事。その後、時間もあまりなかったので、詳しい打ち合わせはせず、日程と宿泊するホテルだけ知らせておいたら、バカンス・シーズンでたくさんの親戚や友人との予定を調整してスケジュールを空けておいてくれた上、最終的には3日間とも車2台で私たちの観光に付き合ってくれたのだ。ありがとう、H&N!!!フランス人って色々な先入観を持たれる事が多いけれど、親しくなると本当に際限なく親切にしてくれる。もちろん仲良くなることが重要。知り合いが増える度に、フランス語を話せるようになって良かった…と思う今日この頃。
le samedi 19 avril
朝7h15のTGVに乗らなくてはならないので、帰国組みのお見送りは出来ない。パリを離れるとなると、それなりにやることがあったので、あまり眠れないまま5時起床。その上、みんなとの約束に遅れそうになり(朝、早すぎてバスの本数がない上、こちらには時刻表がない)タクシーに乗ったら、気を利かしてくれたのだろう、私には何も確かめず、TGVの乗り口の方に車をつけてくれた(汗)。みんなとのRDV場所は、はるかかなた。やはりみんなとは直接車内で会うことに…。この季節、フランスでも春のバカンス・シーズンなので、こんな朝早くでも駅は人でごった返していた。
なんせバスクは遠い。TGVでも5時間以上かかる。もちろん飛行機って手もあるけど、私は無類の飛行機嫌いなので、行けるところは全部鉄道で行くのだ!それにしてもせっかくの旅なのに、風邪の症状がますますひどくなり、完全な鼻づまり+咳が止まらない…。みんなにうるさい思いをさせて悪いけど、列車の中では子供も泣き叫んでいたから、ま、いっか。
初めて見るボルドーを通過し、お昼過ぎにようやく今日の目的地 Saint-Jean-de-Luz (サン・ジャン・ドゥ・リュズ)に到着。ホテルは駅前にあった。すぐにNが電話をしてきてくれて、お昼の2時過ぎにホテルのロビーで待ち合わせることになった。それまで少し街を散策…と思いきや、どこもかしこも閉まっている。そうなのだ、ここはバスクでは有名な観光地だけれど、田舎。まだまだお昼休みをしっかり取るお店が多い。ようやく開いているカフェを見つけて入ると、主人は私たち5人組を不思議そうに見ながら注文を取ってくれた。飲み物のメニューしかないので、「食べるものは出来ますか?」と聞くと、サンドイッチなら出来る、との事。みんなサンドイッチを頼んだら、主人はそれからパンを買いに行っていた(笑)。まわりにチラホラいるお客は、私たちには目もくれず、テレビの競馬に夢中。おやじカフェってだけじゃなく、ここは PMU カフェだったのだ!(別にいいんだけどね)
約束の時間にホテルに戻ると、H&Nがもう到着していた。再会のビズの後、さっそく2台の車に分乗して、後は2人にお任せ~。
最初に Socoa で大西洋を眺め、Abbadie で奇妙な天文学者のお城を眺め、遠くないスペインとの国境を越え、スペイン側の最初の街 Hondarribia (オンダリビア)に入る。フランス側の隣町 Hendaye (エンダイユ) からは船が頻繁に出ているらしい。なんだかスペインに入ったからか?、家々の色彩が急に鮮やかになった。H&Nの提案でアルマ広場にあるパラドール(歴史的建造物を再生した国営ホテルチェーン)でお茶を頂く(Hにご馳走していただきました~)。写真を撮るのを忘れていたけれど、城塞のような外観からは想像できないほど、内部は明るくて広々としている。お部屋は全部海側にひらけているそうな。泊まってみたい~、こんな所に~。でも高~~~い!詳しくはHPで。
広場に面したお土産物屋さんで観光客らしく絵葉書を買う。「オラ」と「グラシアス」、私が知っている数少ないスペインの言葉をここぞとばかりに使っておいた。そう、ここはスペイン。スペインと言えば長~いお昼休みで有名。確かに夕方になっても開いてないお店が多かった。夜になったらきっと賑わうんだろうな~。やっぱり一度泊まってみたいもんだ。
夕方、Urrugne を経由して、Saint-Jean-de-Luz まで送ってもらい、今日は解散。私たちは今夜の夕食を求めて、街の中心へと向かう。天気がいまいちで曇ってはいるけど、まだ真っ暗ではない。ルイ14世が結婚式を行ったという教会くらいは見ておかないと!バスクの教会は木をふんだんに使用しているのが特徴。天井は船底のようで、側廊がなく、身廊に向けて木製のギャラリーが張り出している。普段は質素なデザインが多い中、ここは格別。王のために金ピカです。
夕食前だと言うのに、私たちは地元のお菓子探索。Nからすすめてもらった Pariès と Maison Adam で、(バスク地方の)マカロンの食べ比べ。私は Maison Adam に一票かな…。今、パリのマカロンがもてはやされているけど、各地方に古くからマカロンはあって、それぞれ個性的で違いが面白い。もちろんパリのマカロンが一番洗練されていて美味しいのは間違いないだろうけど。Pariès では可愛らしい缶のケースに引かれてマカロンに似たお菓子ムシューを17 € も出して購入。でも後でふと気づいた。「賞味期限は???」聞くと2週間だという。私が日本に帰国するのは3週間後。お土産に…と可愛らしく包んでもらったけど、風味が落ちたものを食べてもらうわけにもいかないし…、仕方ないので、旅の仲間にプレゼントすることにした。
レストランが立ち並ぶレピュブリック通りを過ぎると海。海を見ていると雨がポツ、ポツ降ってきたのでレストランへ急ぐ。今夜はメニューと店構えで適当にお店を選んでみたけれど、それが 結構当たり!La Taverne Basque (5, rue de la République)では、お値段もお手ごろに地元のお料理が堪能できた。Saint-Jean-de-Luz では、魚が新鮮で soupe de poisson (魚のスープ)が名物らしいので、まずはそれを前菜に頂く。ルイユ(この地方の名産でもある赤唐辛子のきいたソース)をつけたクルトンと一緒に頂くのもまた美味しい。メインには poulet basquaise (バスク風チキン煮込み)を頂く。パリでも良く食べた一品だけど、ここではやはりピリリとエスペレット唐辛子がきいていた。
le dimanche 20 avril
夜中、風邪の症状がピークに…。咳き込んであまり眠れなかったが、非情にも夜は明けてバスク2日目。Hは今日10時半ごろに迎えに来ようか…、と言ってくれてたけど、ちょっと弱っている私は12時にしてもらった。今日もお天気はいまいち。
まずは今夜泊まる Bayonne (バイヨンヌ)のホテルにチェック・インして荷物をおろした後、酔っ払いに絡まれながら、軽くランチ。その後、眺めの良さで有名なスポット Belvédère (ベルヴェデール) にも立ち寄りながら、1時間ほどかけて、山側バスクの有名な街、Saint-Jean-Pied-de-Port (サン・ジャン・ピエ・ドゥ・ポール)へと向かう。
ここについてまず目につくのは建物に刻み込まれた年代の古さ。昔、アリナミンAかなんかのCMで名高達郎と共演していたバスクの男達を覚えているだろうか?力自慢のここの男達はいつも皆で助け合って、家々を造っていたそうな。そうして完成した年をファサード玄関上部に刻みこむ。16~~年とか17~~年とかの建物が普通に残っているのに改めてびっくりする。あと、帆立貝のマーク。ここはスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂への巡礼の宿場町。今でも帆立貝のマークを掲げた貸し部屋がたくさんある。
観光客の多いこの街、もちろんショッピングも楽しめる。バスクはストライプ柄の厚手の布 linge basque でも有名。布好きの私としてはそれを見るのも楽しみにしていた。お目当てのお店 Cherbacho-Inchauspé (16, rue d'Espagne )には立ち寄れなかったけど、有名ショップ HELENA がここにもあったので、お土産にいくつか買い求めた。もちろん今は何でもネットで買える時代だけど、こうしてその場で手にとってお買い物する喜びは絶対に失われるものではないわね。山バスク発の伝統的なはき物 espadrille (エスパドリーユ) のお店も見る。数年前から流行っている夏のサンダルのデザインはここから来ていたのか…。夏にはきたい可愛いものがバーゲンで安くなっているのでついつい買いそうになったけど、これはかさばるのでぐっと我慢するのだ。(写真は一番チープなタイプのエスパドリーユ、これ以外に可愛いデザインのがたくさん売られている)
城塞を目指して坂道を登りつめると、一番高いところから街を見渡すことが出来る。バスクの緑は日本の緑に似ている。ここに来て改めてそう思う。私の好きな南仏特にリュベロンのあたりは、もっと乾いた色をしている。あそこでは原色を目にすることもほとんどない。ここの緑は色濃く、水に恵まれた土地のよう。日本とは屋根の色も街並みも違うけれど、遠景は日本を思い出させた。(まだ懐かしくはないけどね)
今日はここでH&Nとは解散。ここからノスタルジックなぼろい赤い列車に乗って、1時間ちょっとかけて Bayonne に戻る。駅ではマッキ~がブルターニュでお世話になったフランス人女性から紹介されたという日本人女性Aさんが私たちを待っていてくれた。車で1時間ほどかかる所に住んでいるにもかかわらず、一緒に夕食でも…と会いに来てくださったのだ。水質調査がご専門で、教会のオルガンも弾くと言う、多彩なAさんは日頃ほとんど日本語を話さない生活を送っているらしい。
ホテルのマダムに教えてもらった駅近の美味しいレストラン L'Echauquette (1, rue Hugues )は、最初かかってる音楽や給仕の男の子の雰囲気で「本当に美味しいのか???」と、思ったりもしたけど、結局、全員、大満足。ここでもお手ごろ価格でおいしく地元のお料理が堪能できた。私は前菜2種とデザートを頂いたのだけど、もちろんバイヨンヌの生ハムははずせないでしょう?もちろんバターと一緒にね!エスプレッソ付デザート盛りもなかなか嬉しい一品だった。
Aさんとのおしゃべりも楽しく、あっという間のディナー・タイムだった。またいつかどこかで再会出来ることを願いつつ手を振る。明日はバスク最終日。
le lundi 21 avril
今日は最終日という事もあって、夕方TGVに乗るので、あまり時間がない。H&Nのお迎えも朝の10時になった。今朝のお天気は最悪、嵐だ。Joもいないのに全くなぜ~~~???
まずは、子供時代よくここでバカンスを過ごしたと言うNの絶対のおすすめで、Biarritz (ビアリッツ) に行くことになった。実は私がラフに立てていた予定には Biarritz は入っていなかった。ここはモナコやニースのようなカジノもある高級リゾート地なので、まあ私には縁のない所ってことだ。でも確かに、素朴文化全開のバスクではあるけれど、Biarritz もバスク地方の代名詞であることは否めない。一度は行かねばね。ただ…すごい雨風で、撮った動画はまるで台風時の生中継レポートのよう。笑える。ここは天気が崩れると、いつもこんな風にすごいことになるらしい。
その後 Biarritz を離れ、 2人が良く行くというおすすめレストラン Auberge chez tante Ursule (Fronton du Bas-Cambo, Cambo-les-Bains)で、またまたバスク料理に舌鼓を打つ。今日は夜、おそらく何も食べないので、ここでは3品しっかりと頂くことにする。前菜には 赤ピーマンに魚のすり身を詰めたもの。メインには大好物の子羊。山深いバスク地方はいたる所で羊の放牧を見かけるまさに羊大国。そしてデザートには留学時代、マカロンとともにはまっていたガトー・バスク。本場のものがようやく食べられた!パリのも長年食べてないけど、何かここのは一味違っているような…。まさか唐辛子は入ってないよね???パリで食べていたものより中身が柔らかくてフランっぽい感じ。でもどれもこれもみんな美味しくて、今、バスク料理に注目が集まっているのもうなずける。パリで今話題のシェフはバスク出身の人が多いし、流行っているのもバスク料理のお店…。日本でも最近バスク地方の特集を目にする機会も増えてきたし、恐るべきバスク・パワーかも。
フランス人はもともとこの土地が大好きなようだ。雄大な自然、まだあまり観光化されていない素朴な雰囲気。同じ南フランスでもいわゆるプロヴァンスはイギリス人やドイツ人、たくさんの外国人に占拠されつつあるけど、ここはまだそれほどでもない。観光化されてない分、他に比べて素敵なお宿は少ない気がしたけど、Nの話では物価が安かった分、年金暮らしのパリジャンなんかが大勢押し寄せることになり、最近では土地の値段もどんどん上がっているそうだ。素朴なバスクが楽しめるのも、もう終り…なんて事に、ならなければ良いけれどね。
食後あまり時間もないので、レストランからそれほど遠くない2人のおうちでお茶を頂くことになった。(写真は2人の家、テラスからの眺め)
Hが言っていた。せっかく(遠くから)来てくれたのに3日間ずっと天気がすぐれず、最高のバスクを見てもらえなかったのが残念だ…と。いえいえ、とんでもない!ずっとNの車に乗っていた私は、彼女ともたくさんお話が出来たし、2人の住むおうちも見ることが出来たし、H自慢のサボテン・コレクションも見れたし、もちろん2人のおかげで色々な場所にも行けたし、大満足の3日間だった。旅の仲間達もとても喜んでくれたはず。本当にお世話になりました。ありがとう、H&N !!! またいつか遊びに行きます。でも今度は風邪ひきじゃない時に、是非…。
18h03、バイヨンヌからパリ行きのTGVに乗り、23h20にパリのモンパルナス駅に到着。私はマッキ~以外の3人を私のアパルトマンのすぐ近くに予約していたホテルまで送って行って、長い1日が終了。いよいよMさん、N子ちゃん、Y子さんも明日帰国です。
地方から戻るといつもパリがかすんで見える。シンデレラの魔法が解けた時のような感じだろうか。明日からしばらくパリ・ライフです。
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