l'appartement
3.9ユーロと大変安くなっていたので迷わず購入したDVDで久しぶりにお気に入りの映画「l'appartement」を観た。ジル・ミムニ監督のこの映画は今や夫婦共々フランスのみならず、ハリウッドでも引っ張りだこのモニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの共演2作目にあたる。初めて観たのは、パリに着いて1年たたない頃、公開されて間もない頃だったと思う。まだフランス語はそれほどよくわからなかったけど、複雑に交錯する物語がおもしろくて、ぐぐっとその世界に引き込まれたことを覚えている。ブレイク前のモニカの美貌にもほれぼれしていたっけ…。でも一番私がこの映画に惹きつけられたのは、アール・ヌーヴォーの名作がさりげなく登場していたからかもしれない。
それは16区にあるEugène-Manuel通りとClaude-Chahu通りの角に立つ、シャルル・クレインの作品。1903年のファサード・コンクールを獲得したそのファサードはエミール・ミュレーのセラミックで覆われ、そして同じくセラミックで描かれるアザミの装飾で有名。私はこの建築の玄関ホールまでしか撮影したことはないけれど、その内部までを彷彿とさせるシーンがいくつも登場する。もしかしたら劇中のアパルトマンの内部もここで撮影したのでは???と興味はつのるばかり。もしスタジオのセットだとしてもアール・ヌーヴォーをきちんと理解したデコレーションには感激。
で、今回観ていて新たに気づいたこと。この監督、よほどアール・ヌーヴォーが好きなのか?お葬式のシーンでは20区にあるペール・ラシューズ墓地の、パリでも珍しい火葬場が使用されていた。この火葬場、それまで土葬が主流だったカトリックの国フランスで、1887年に火葬が認められ1890年に完成したもの。レンガによるこのクーポールは1904年に完成し、アール・ヌーヴォーのお気に入りセラミストであったアレクサンドル・ビゴのセラミックで覆われているのだ。
何度も観ていたはずなのに、今まで気にしたことのなかった場面。なんか隠れキャラを発見したみたいで、ちょっと嬉しい!
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